相続期限過ぎたらどうなる?節目の3/4/6/10ヶ月までにすべきこと

相続手続きには重要な期限があり、これを過ぎると様々なリスクが生じる可能性があります。本記事では、相続開始後の主要な期限である3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、10ヶ月までにすべきことを詳しく解説します。

相続放棄や限定承認、準確定申告、相続税の申告と納税など、それぞれの期限内に行うべき手続きとその重要性を分かりやすく説明しています。また、期限を過ぎた場合に起こりうる問題点や対処法についても触れていますので参考にご覧ください。

目次

期限がある主な相続手続きと注意点

相続手続きには、いくつかの重要な期限があります。これらの期限を守ることで、相続に関するトラブルを避け、スムーズに手続きを進めることができます。ここでは、主な相続手続きの期限と注意点について詳しく解説します。それぞれの手続きの重要性を理解し、適切なタイミングで対応することが大切です。

相続放棄と限定承認(3カ月以内)

相続放棄と限定承認は、相続開始を知った日から3カ月以内に行う必要があります。これらの手続きは、被相続人の借金や債務が多い場合に特に重要です。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことになります。一方、限定承認は相続財産の範囲内でのみ債務を返済する方法です。

例えば、親が多額の借金を残して亡くなった場合、相続放棄をしないと、その借金を返済する義務が子どもに移ってしまいます。また、相続財産の中に価値のわからない不動産があり、借金との関係が不明確な場合は、限定承認が適している場合があります。

注意点として、この3カ月の期限を過ぎると、原則として「単純承認」したとみなされます。単純承認の場合、プラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐことになるため、借金が多い場合は大きな負担となる可能性があります。したがって、相続が発生したら、まず被相続人の財産状況を速やかに調査し、必要に応じて相続放棄や限定承認の手続きを検討することが重要です。

被相続人の準確定申告(4カ月以内)

準確定申告は、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について行う確定申告です。この手続きは、被相続人が死亡した日の翌日から4カ月以内に行う必要があります。準確定申告が必要なケースとしては、以下のような場合が挙げられます:

  • 被相続人に給与所得があり、年末調整が済んでいない場合
  • 被相続人に事業所得、不動産所得、譲渡所得などがある場合
  • 被相続人の各種所得の合計額が所得控除の合計額を超える場合

準確定申告を行わないと、本来還付されるべき税金が戻ってこなかったり、逆に追加の税金を支払わなければならなくなったりする可能性があります。また、期限内に申告しないと延滞税や加算税が課される可能性があるため、注意が必要です。相続人の誰かが代表して申告を行うことになりますが、専門的な知識が必要なため、税理士に相談するのも一つの方法です。

相続税の申告と納税(10カ月以内)

相続税の申告と納税は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。相続税が発生するかどうかは、相続財産の総額から基礎控除額を引いた金額で判断します。2023年現在、基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」となっています。

相続税の申告と納税の流れ

  1. 相続財産の調査と評価
  2. 遺産分割協議
  3. 相続税の計算
  4. 申告書の作成と提出
  5. 納税

注意点として、期限内に申告・納税しないと、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。特に、相続財産の中に不動産や事業用資産がある場合、評価に時間がかかることがあるため、早めに準備を始めることが大切です。また、相続税の計算は複雑なため、税理士に依頼することをおすすめします。

遺留分侵害額請求(1年以内)

遺留分侵害額請求は、相続開始と遺留分侵害を知った日から1年以内に行使する必要があります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された最低限の相続分のことです。例えば、被相続人が遺言で特定の相続人に財産のほとんどを相続させるような内容を残した場合、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があります。

遺留分侵害額請求の流れ

  1. 遺留分の算定
  2. 侵害額の計算
  3. 請求の意思表示
  4. 具体的な金額の主張と交渉

注意点として、遺留分侵害額請求権を行使しても、実際に支払いを受けるまでに時間がかかることがあります。また、相続開始から10年が経過すると、知っていたかどうかに関わらず請求権が消滅します。遺留分侵害額請求は複雑な法的手続きを伴うため、弁護士に相談することをおすすめします。

相続登記(3年以内、2024年4月1日以降)

2024年4月1日から、相続による不動産の所有権移転登記が義務化されます。この新しい制度では、相続開始を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。これは、所有者不明土地問題への対策として導入されるもので、登記を怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続登記の手続きの流れ

  1. 相続人の確定
  2. 遺産分割協議
  3. 必要書類の収集
  4. 登記申請書の作成
  5. 法務局への申請

注意点として、相続登記を放置すると、将来的に権利関係が複雑化し、登記が困難になる可能性があることです。また、相続登記をしないと、不動産の売却や担保設定などの処分が事実上できなくなります。相続登記は専門的な知識が必要なため、司法書士に依頼することをおすすめします。

相続手続きを放置する5つのリスク

相続手続きを放置すると危険です!

預貯金や株式の権利が消滅する

相続手続きを放置すると、預貯金や株式などの金融資産に関する権利が消滅してしまう可能性があります。これは、多くの人が気づいていないリスクの一つです。

例えば、銀行預金の場合、相続が発生してから長期間取引がないと、「休眠預金」として扱われる可能性があります。具体的には、最後の取引から10年間動きがないと、預金が預金保険機構に移管され、公益活動に使用されることがあります。さらに、民法上の時効により、5年間取引がないと払い戻し請求権が失われる可能性もあります。

株式の場合も同様のリスクがあります。相続手続きをせずに放置すると、配当金を受け取れなくなったり、株主としての権利を行使できなくなったりします。最悪の場合、株式が「株主所在不明」として扱われ、競売にかけられたり、会社に買い取られたりする可能性さえあります。

不動産の相続登記が困難になる

不動産の相続登記を放置することは、将来的に大きな問題を引き起こす可能性があります。特に注意が必要なのは、相続登記を放置したまま世代交代が進むと、権利関係が複雑化し、相続登記が事実上不可能になるということです。例えば、祖父母の代から相続登記をしていない場合、その子や孫の世代で相続が発生すると、相続人の数が爆発的に増加し、全員の合意を得ることが極めて困難になります。

さらに、2024年4月1日からは相続登記の義務化が始まり、相続開始から3年以内に登記申請をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。また、相続登記を放置すると、不動産の管理や売却が困難になるだけでなく、固定資産税の減額措置が受けられなくなったり、空き家問題の原因になったりする可能性もあります。したがって、不動産を相続した場合は、できるだけ早く相続登記を行うことが重要です。

相続税の延滞税や加算税が発生する

相続税の申告と納付には、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内という期限があります。この期限を過ぎると、様々なペナルティが発生する可能性があります。

  • 延滞税
    • 期限内に納付しなかった場合、納付すべき税額に対して日割りで延滞税が加算されます。
  • 無申告加算税
    • 期限内に申告しなかった場合、本来の税額に加えて15%〜20%の加算税が課されます。
  • 過少申告加算税
    • 申告はしたものの、税額を少なく申告した場合、追加で10%〜15%の加算税が課されます。

これらのペナルティは、本来の相続税額に上乗せされるため、相続人の経済的負担を大きく増加させる可能性があります。特に、相続税の申告や納付を長期間放置すると、延滞税や加算税が雪だるま式に膨らみ、最終的には財産を差し押さえられるリスクもあります。

借金の返済義務を負う可能性がある

相続には、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれるということを多くの人が見落としがちです。被相続人(亡くなった人)に借金があった場合、相続人はその返済義務を負う可能性があります。これには、ローン、未払いの家賃、滞納した税金や保険料なども含まれます。

しかし、このような負債を相続したくない場合、「相続放棄」や「限定承認」という選択肢があります。これらの手続きは、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所で行う必要があります。

相続放棄をすれば、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことになります。一方、限定承認は相続財産の範囲内でのみ債務を返済する方法です。

問題は、この3カ月という期限を過ぎてしまうと、自動的に相続を「単純承認」したとみなされ、被相続人の借金を全額引き継がなければならなくなることです。つまり、相続手続きを放置することで、思わぬ借金を背負ってしまうリスクがあるのです。

遺留分侵害額請求や相続回復請求権が行使できなくなる

相続に関する権利には、時効があるということを知っておく必要があります。例えば、遺留分侵害額請求権は、相続開始と遺留分侵害を知った日から1年以内に行使しないと時効により消滅してしまいます。また、相続開始の日から10年が経過すると、知っていたかどうかに関わらず消滅します。

同様に、相続回復請求権も時効の対象となります。これは、他の相続人や第三者によって相続権が侵害された場合に、その回復を求める権利です。この権利は、相続権の侵害を知った時から5年、相続開始の時から20年で時効となります。

これらの権利は、相続人の利益を守るための重要な法的手段です。例えば、遺言書によって不当に相続権を奪われた場合や、他の相続人が勝手に相続財産を処分してしまった場合などに、自分の権利を主張するために必要となります。しかし、相続手続きを放置してこれらの期限を過ぎてしまうと、たとえ正当な権利があったとしても、それを主張することができなくなってしまいます。

したがって、相続が発生した際には、できるだけ早く相続財産の状況や他の相続人の動きを把握し、必要に応じて適切な法的手続きを取ることが重要です。特に、遺言書の内容に疑問がある場合や、他の相続人の行動に不審な点がある場合は、速やかに専門家に相談することをおすすめします。

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